会社を精算する方法 in Thailand

作成日:2021/11/22 最終更新日:2021/11/26

当サイトは、私のタイの会社を整理・精算した時の状況をまとめたものです。参考になればと思い作成しました。興味がある方は読んでください。

私の会社の例ですが、本社の意向により経営状況は黒字状態での整理となりました。事業の将来性とコロナショック後による、ウィズコロナの影響を受けて、将来的な収益予測を基に、早期の撤退となりました。

幸いにも債務超過状態ではなかったため、厳しい経営状況下での会社の破産手続きや資産整理に関する情報は乏しいかもしれませんが、私なりに集めた情報や教えてもらった情報に基づいているため、信頼性は高いものになっていると自負しております。

このページで分かること

  1. 会社を精算する前に
  2. 会社を精算すると決めたらやること
  3. 資産整理について
  4. 株主総会を開く
  5. 商務省への閉鎖登記手続と債権者への連絡
  6. 会計監査人による監査と再度の株主総会
  7. 精算手続きのその後
  8. 従業員の解雇補償金
  9. 各種契約の解除費用
  10. タイ撤退に向けてのアドバイス

会社を精算する前に

経営判断を行うのは、経営陣だと思います。日本に親会社があり子会社としてタイに法人を設立している場合は、本社の意向が大きく影響するかと思います。

事業の継続か撤退の経営判断する際には、高度な知識と冷静な判断、そしてそのビジネスの将来性が何よりも重要です。

現状を冷静に把握すること

事業を中止・継続の判断には、現在の売上やそのコストなど、PLシートだけでなく、資産などを示すバランスシートなどまで細かく財務の視点だけでなく、今後の収益予測や営業戦略まで見据えて分析する必要がある。

黒字の内に撤退するのが最善ですが、もしかしたらこの先も増益が見込めるケースがあると判断して、損失を出してしまうケースも多々あります。

しかし、事業中止の結論に至るまで、時間をかけすぎて、赤字額を拡大するケースが一般的かもしれません。この場合、中止の決断に至るまでに、これまでに投資した分を回収できていないケースなら「せっかく投資したから」とか「もったいない」という市場分析とは異なる経営者の個人的な理由によるものが多く、気がつけば損失が増えていたりします。

一流経営者の条件の1つと言われるのが、失敗時の対応力です。投資世界で世界一有名なウォーレン・バフェットでさえ、100戦100勝ではありません。経営のカリスマと呼ばれた元日本マクドナルドの会長だった藤田田さんの著書を読んでも、失敗した事例が出てきす。

失敗したと判断したら、即座に対応することが、被害を最小限に抑え、それが次へのビジネスへとつながっていきます。

将来性の低いビジネスモデルなのか?

環境問題対策によるガソリン車の廃止の流れ

時代の変化が激しい昨今において、ビジネスの将来性を占う事は極めて重要です。EUでは、2035年にガソリン車・ディーゼル車を廃止して、電気自動車や次世代エネルギー車のみに切り替えていく方針を取っています。これにより、自動車産業は大きな転換期を迎えることになりそうです。

これにともない、ガソリン車向けの部品を作成している工場の経営者たちも、シビアな経営判断を求められると言えます。

CO2削減の環境問題が表向きの要因ですが、電気自動車の普及により電気の重要が増え、電気を作成するために使用される、例えば火力発電によるCO2の増加は、ガソリン車による排気ガスより多くなると言われています。エコな水力や風力発電だけでなく太陽光発電が増え、より安全かつ廃炉問題が解決された原子力発電が普及して火力発電に頼らない方法が主流になるならば、極めて大きな意味を持ちます。

しかし、電気自動車になると車1台を作り上げるための部品数が1/2~1/3程度減少するため、部品を製作する工場だけでなく、そこで働く労働者たちにも大きな影響が出ることも見逃せません。

AIの台頭

またAIによる自動運転が一般化すると言われる将来は、人手不足が顕著な配達業や、セカンドキャリアとしてある種のセーフティネットにもなっているタクシー業界も同様に、AIが人の仕事を奪うと叫ばれて、AIとの差別化が生き残る上での生存戦略として命題化されています。

時代遅れの遺物

また、令和の時代に、今更ながら、着メロ用の楽譜を作る雑誌を創刊しようとは誰も思います。今の若い人たちには、自作で着メロを作っていたというのでさえ知らないでしょう。私が学生時代にコンビニでアルバイトをしていた時に、そのような雑誌が有ったことを記憶していたので、例に挙げてみました。

というよりも、そもそも『着メロ』自体が全時代のフレーズだったりします。このような言葉を使うと、老害認定されかねませんね。

現在は、一部でアナログレコードやカセットテープやテープレコーダーが一部の界隈で流行っているとニュースで取り上げられていますが、HDレコード全盛の昨今では、主流ではありませんので、今後爆発的に需要が改善することは望めません。

昭和世代の方なら一度は体験したことがあるかもしれませんが、ギズ口に塗る赤チンは、2020年の年末で生産中止となっています。以前は主力製品だったものが、時代の変遷とともに最先端のアイテムに代替されていき、姿を消していくのはもはや珍しくはありません。特に主力製品の場合は、会社によってはアイデンティと同等だったりするケースもあるため、それを止めるということは、大いなる決断を強いられたと想像に難くないと言えます。

タイ特有の事情を見極める

タイの反政府抗議集会

我々日本人にとって一般的な話だけでなく、タイという国による背景や理由によっても撤退するか否かの判断を求められるケースもあります。2021年現在、タイは未だに軍部が第一党となっています。現在も、タイ国内各地で、軍事政権反対や民主化を求める政治集会やデモは繰り広げられています。

これらの政治的不安定さによる、見通しの不透明さだけでなく、国内インフラの問題による洪水問題あります。

洪水被害により、工場の浸水で機械がダメになるケース。BOIなど認可がないと企業で土地を持てない問題、タイの国内企業との合弁会社を設立したものの、契約がこじれて最終的に事業を継続できなくなるケースなどは、珍しくはありません。こうした問題も、タイからの撤退となる要因となりえます。

マーケットシェアも考慮する

例え将来性が乏しい業種だとしても、そのジャンルで大きなマーケットシェアを獲得しているならば、タイからの撤退ではなく、事業縮小で対応できるかもしれません。今後、競合他社の撤退によってシェアが増える可能性残っています。しかし、シェアを制したからといって、需要自体が減っていくため、需要に合わせた供給量を確保していけるならば、規模は縮小しますが会社は存続していけるかもしれません。

ポケベルは2019年9月までサービスを提供

90年代に一斉を風靡し、日本で社会現象となでまったポケベルことポケットベルは、唯一サービスを提供し続けた東京テレメッセージ社が2019年9月末をもってサービスを停止しました。最後は、首都圏の約1,500名の医療従事者が利用していたようです。スマートフォン全盛の時代でも、細々と事業を継続していた事が伺えます。利用者のために、もしかしたら苦しい中サービスを提供し続けていたかもしれません。

ちなみに、業界大手だったNTTドコモは2007年3月に撤退しています。この当時は、まだガラケーのみで、写メールやiPodなどの全盛期です。2007年6月29日に初代iPhoneが発売され、時代はスマートフォンへと変遷していきます。携帯電話とポータブル音楽プレーヤーを別々に所有していた時代から、スマホ1台で済む様になっています。更に今後は5Gへと意移行していきます。280MHz(ポケベル波)だったのが、wifiでは2.4GHzや5GHz帯が主流となり、5G用には3.7GHz帯や4.5GHz帯、ミリ波帯の28GHz帯が使用される予定です。

話が脱線してしまいましたが、将来性が低い業界であっても、マーケットのシェアをキープし続ければ、細々とはなりますが長く事業を継続していけた一つの事例かもしれません。

参考:東京テレメッセージ株式会社

会社を精算すると決めたらやること

タイで会社を精算すると決めたら、重要なことがいくつかあります。タイでの会社整理手続きは、大まかでは日本と変わらないと言われています。それでも、会社を精算した経験がある人の方が少ないと思われますので、そのやり方を説明していきます。特に在日本法人から赴任されている方は、明日は我が身と思って頂けると、最悪な事態になった時にその作業を押し付けられることになったとしても、本国からの評価を落とすどころか、むしろ評価を上げることさえ可能になるかもしれません。

会社閉鎖までのキャッシュフローの確認

会社を精算するにあたり、様々な手続きやそれに伴う費用が発生します。事務手続きの観点であれば、商務省や税務署への申請費用などが挙げられます。

馬鹿にならない大きな支出といえば、事務所の契約解除による違約金や解体費用や工場の機械を同業他社へ売却できないのであれば、その処分費用。そして何よりも従業員の解雇補償金です。こちらは勤務期間に応じて変動しますが、長年働いてくれた従業員へはその年月に応じて、賃金が増加します。

銀行口座の一本化

こちらは、契約していた会計事務所からの提案でしたが、複数の銀行に口座がある場合、一本化して1つの銀行にまとめてしまった方が、資金の確認と今後の運用を含めた作業がスムーズになるというので、提案されました。もしEコマースなどで、PayPalなどオンライン取引ツールを使用している場合も、これに該当するかと思われます。

隠し口座対策の意味合いが強く含まれるとアドバイをもらいました。無いとは思いますが、粉飾決算していたケースにはその通りだと思いました。

債権者を確認

会社整理時に大きな障害となるのが、資産状況の確認です。特に債権者についてです。黒字状態で解散するなら、債権者問題の解決については、そこまでこじれる問題になるケースは少ないはずです。黒字であれば、資産はある状態ですので、仮に銀行からの借り入れがあったとしても返済は可能であると思われます。

しかし、赤字状態で資産状況も厳しい状態での解散となると、債権者対策が大きな問題となります。いくらタイでの経験が豊富とはいえ、タイ国内の法律で破産手続きが進むため、きちんとタイ国内の法律を熟知している、できれば信頼できる弁護士に依頼して対応しましょう。これこそが、最善手です。

また契約している会計事務所にも協力を依頼してください。債務状況の確認など、必須となります。

タイでの自己破産

タイの法律では、安易な自己破産は認められていなく、債務超過状態であっても債権者から申立がないと、解散手続きを進められないようです。

タイでは、会社の経営が行き詰まっている場合、200万タイバーツ以上の債務がないと破産申立ができないようになっています。この場合、会社の資産がマイナスで200万タイバーツ以上となります。

1名以上の債権者が200万バーツ以上の債権を保つ場合、もしくは1名あたり100万バーツ以上の債権者が複数で申請することで、破産手続きを行えるようです。

参考:ジェトロ 【仏暦二四八三年・破産法令】

債務超過で破産手続きを行うに当たり、債権者集会や財産の分配などを行う必要があります。弁護士と契約して手続きを行う必要があるため、親会社がある場合なら契約金などの資金援助を期待できますが、自己資金でタイに会社を設立した場合なら全て経営者負担となります。

資産整理について

資本金の返却

私の会社の場合、大きな会社ではなくBOI企業でもなかったため、資本金を全てが親会社の出資となり、親会社の持ち株分が出資金の49%、タイ法人51%がという状況でスタートしました。会社を閉鎖するにあたり、全て返却となりましたが、きちんとした契約書もあるため、問題なく解決しました。

他社の実例を聞く限り、パートナー先と揉めることがなければ、すんなりと解決できることが多い様です。ただ、下着メーカーのワコールの在タイ企業の Wacoal Thailand さんの様なタイで上場している企業の様なケースは、私の取引先では聞いたことが無い様なので、具体的な情報はわかりませんでした。

資産の売却

会社で使用している備品類は、全て売却するか捨てるか、もしくは本国へ持ち帰るかとなります。商品の在庫も当然ながら資産となります。例えば日本の商品をタイ国内で販売するタイプのビジネスであれば、そのまま日本へ持ち帰ることで、在庫処理は可能です。この場合親会社が在庫を買うことになるか返品扱いとなり、在庫整理はシンプルです。もし契約で日本の販売元に返却可能なのであれば、商品在庫の問題は一気にシンプルとなります。

しかしながら、親会社へ返却不可の場合や、タイ国内向けに製造しているモノなら、タイ国内で売却する必要があります。この場合、安く買い叩かれるケースが多々あるようです。

また工場などで使用している機材も資産です。状態によりけりですが、うまく引き取り手が見つかるまで、数ヶ月かかるケースもあったようです。買い取り手がいなければ、捨てることになるため、この場合も費用がかさみます。

私の場合は、全て売却できず処分する前提での最大金額となる見積もりを作成していたので、最終的にはそれ以下となったので、トータル金額を抑えられた分が評価につながりました。

事務用品などの備品の売却

会社で使用していたOA機器や備品も会社の資産です。場合によっては事務所のビルの管理会社側で買い取ってくれるケースもあります。事実、私の会社は買取対応をしてもらい、デスクやオフィスチェア等を捨てる手間とコストを節約できました。状態が良かったのもあるかもしれません。特にラックやチェスト類は大きなモノは、処分に困っていたので助かりました。

コピー用紙など使えるものは、そのままグループ会社や知り合いの会社にタダ同然の格安価格で譲渡しました。

のれんも資産

「のれん」と聞くと、料理屋の入り口にあるものを予想する方もいるかもしれませんが、ビジネスでいうならばブランド名やライセンス料も含まれます。タイ国内でいうならば、セブンイレブンやローソンなどのコンビニエンスストアや、火を使うことなく調理できるため比較的参入障壁が低いサンドイッチのサブウェイも人気のフランチャイズ店です。これらを契約している場合なら、その屋号を使う権利がのれん代に該当します。

フランチャイズ契約やライセンス契約の内容次第ですが、他社へその権利を譲渡できる場合もあります。同一資本関係の会社にのみ譲渡できる場合や、M&Aなら可能など様々なケースがあります。もし有用なライセンス契約をしているならば、その権利の譲渡も視野に入れてください。状況に応じて、売却可能な資産になる場合もあります。

株主総会を開く

会社を解散する中で、株主総会を開き同意を得る必要があります。日本と同様にタイでも、非公開の中小企業であっても定時株主総会を年に1回開催しないといけません。この定時株主総会とは別の臨時株主総会を開く必要があり、その準備を行います。

開催準備

年1の株主総会と同様に、例によって新聞に公示を行い、株主宛に総会開催のお知らせを行います。株主総会にて、会社を解散する決議を取り、精算人を選定します。私の会社のケースは、社長でもあるので自分がなりました。これが一般的な様です。会社の規模や状況に応じて、裁判所が認定した人が清算人になるケースもあるようです。

最終営業日を決定

このときまでに、○月×日に会社を解散すると決めます。その時までは会社として営業している状態となるため、従業員の給料やその日までに得た売上に対して税金が発生します。最終営業日を持って、会社が解散するため、日本人であるためワークパーミットを返却し滞在VISAが切れることになります。

その後もタイに滞在し続けるには、旅行ビザなどが必要になるため、不法滞在にならないよう注意してください。

参考:ジェトロ 外国企業の会社設立手続き・必要書類

商務省への閉鎖登記手続と債権者への連絡

会社解散の決議が株主総会で決まったら、商務省へ解散の登記を行う必要があります。株主総会から14日以内に行わないといけないようです。

この時に、清算人の名前を届け出る必要があります。

新聞で公示

会社を精算する旨を商務省に届け出を出してから14日以内に、新聞にて公示する必要があります。

個人的に思うのですが、公的機関にてアナウンスするなら分かるのですが、タイでは中小企業の決算報告とかも新聞で公示する必要があり、このインターネット全盛の自体に、新聞で公示する必然性は常に謎でした。また新聞自体も一般人レベルでは読んでいる人はごく少数なので、公示の意義でも終ぞ納得のいく答えは得られませんでした。

債権者へ連絡

私の会社のケースでは、債権者がいなく、厳密には親会社からの資金でのみでスタートしていて、銀行からの借り入れもなく、トータルでは利益が出ている状態(黒字)で解散したため、債権者はいませんでした。

しかし、一般的には金融機関だけでなく取引先などが債権者になるかと思います。これらの組織・個人に対して、解散する旨を連絡する必要があります。

参考:ジェトロ 外国企業の会社設立手続き・必要書類

会計監査人による監査と再度の株主総会

解散するにあたり、会社の財務状況のチェックを受けます。一般的な決算時と同じ様な税務調査を受け、隠し資産や粉飾決算が無いかなど、厳密に監査を受けます。

財務諸表を作成して、それを基にVATの停止・還付を税務署へ申告します。このタイミングで、タイの会社が完全に消えてなくなるようです。

精算賃借対照表の承認

監査を受けた後で、最終的な財務状況が確定し、それを基に株主総会を再度開き、株主に対して報告及び財務諸表の承認を得ます。

この株主総会は、先の総会で決まった清算人が招集をかける形となります。私の会社の場合は、代表取締役=私=清算人なので、通常の株主総会の招集と同じプロセスでした。

精算手続きのその後

3ヶ月毎の報告

精算手続き中は、3ヶ月毎に商務省へ報告が義務付けられているようです。先にも述べた通り、私の会社のケースでは、そこまで長引くことはなかったので、この報告はしておりません。

銀行口座の閉鎖

会社の精算を終えるときには、法人名義の銀行口座を閉鎖する必要があります。最終的に残る金額があるかどうかは、その会社次第ですが、解散処理の手続き契約している会計事務所への支払い完了後、私の時は親会社への返金後に最終的には残高が0になり、問題なく解約となりました。

緊急連絡先の登録

商務省か税務署かのどちらかだったかは不確かですが、清算人とは別に、タイ国内の住所を指定して緊急連絡先の様な形で、申請する必要があります。多くは、知り合いの方や中の良い会社であったり、契約した会計事務所に依頼したりします。

解散手続きの中で、厳密な税務調査を受けるので基本的には問題は発生しませんが、万が一、何かしらの不備があると、指定された住所に郵便が届き、追加の税金などを収めるような連絡があるようです。そのため、もしタイ人の方とご結婚をされている場合は、その方もしくは親族の住所などにしたりもできます。

ただきちんと納税をしている限り、このような連絡が来ることはまず無いと教えて頂きました。解散してからそこまで時間は経っていませんが、今の所連絡は無いようです。

会計書類の保存

最低5年間は、会計書類を保存しておくように言われました。私の場合は、知り合いの会社がバンコクにあったので、そこに保管をお願いしました。ダンボールで10箱分もないので、そこまで大きな荷物ではない事も幸いでした。そのため、何かあれば、私自身がタイまで赴き対応は可能な体制だけでは取っておきました。

この書類保管も、会計事務所によっては有料サービスとして対応してくれます。義務付けられた期限が過ぎ、私自身も忘れた頃に連絡がくるのではと思っています。

従業員の解雇補償金

タイの法律により、会社都合により従業員を解雇する場合、解雇補償金を支払わないといけません。この金額が、極めて馬鹿になりません。タイで会社を経営している方なら、涙を飲んでこのお金を支払った方も相当数いると思います。

勤務期間に応じて増額

採用してから雇用期間が長ければ長いほど、この金額がバカでかくなります。

勤続期間 補償金額
120日未満 なし
120日~1年未満 退職時の賃金の30日分
3年以上6年未満 退職時の賃金の180日分
6年以上10年未満 退職時の賃金の240日分
10年以上20年未満 退職時の賃金の300日分
20年以上 退職時の賃金の400日分

最低でも1ヶ月前に書面にて告知する義務があります。日本の早期退職優遇制度に近いかもしれませんが、経営者側としては非常に痛い出費であり、避けては通れません。従業員有責の場合であるなら、きちんとしたプロセスさえ踏めていれば解雇可能ですが、会社精算ともなればそうはできません。また、従業員側もタダで給料を多くもらえるわけですが、たとえ会社が解散するとわかっていても、最後までしがみつきます。それは、タイで働く労働者にとって転職市場であるからです。コロナの影響で大きく後退したとはいえ、日本と異なり、転職はキャリアのステップアップとして捉えているため、みんな前向きに会社を転職します。次の職場があるからです。

そのため、従業員を長期間働き続けることが、タイの経営者にとって悩みのタネでもありましたが、解散時にはこれが諸刃の剣となって返ってきます。事実私の会社でも半年分以上の給料を多く支払う羽目となりました。

各種手当にも注意

上記は法律で保護された部分ですが、会社独自の社内規則で長期間の就業によるボーナスを設定してある場合もあります。手当として設定しているならば、支払う義務が生じてきます。これも長く働いてもらうための措置だったはずですが、最終的には重くのしかかってきます。

各種契約の解除費用

馬鹿にならないのが、各種契約している物件なりサービスの解約違約金です。タイでは事務所の契約期間は、3年更新が一般的です。日本の契約だと、途中解約の場合、違約金が発生ケースもありますが、私の経験上でも比較的少ないと思われます。インターネットも3年しばりなどがあります。

私の会社は、事務所の中途解約の違約金が、契約時にデポジットとして支払った3ヶ月分の家賃が没収となりました。また契約していたインターネット料金も3年縛りのため、残りの契約期間分も7掛けでしたが支払うハメとなりました。これだけでも、結構な出費となりました。

リース契約

契約期間がながければ、月当たりの金額が安くなる契約が普通ですが、これで長期間の契約をしている中での途中解約になると、その分違約金も高く付きます。残りの期間を全額というケースもありました。特に特殊機材の場合は、結構高く付きました。初期費用を抑えるために、長期間でのリース契約をしたのが、今を思えば失敗だったと言えなくもありません。

タイ撤退に向けてのアドバイス

見極めは早めが吉

私のタイでのビジネスは長期的にはうまくは行きませんでしたが、短期の視点では黒字化していた事に限れば、そこそこだったかなと言えます。決して成功者だった訳ではありませんが、そんな私の経験を踏まえた上で敢えてアドバイスをするとなるなら、撤退のタイミングを見失わないことです。これに尽きます。決断は早ければ早い方が傷口は浅く済み、次の新たなビジネスへのスタート資金を残すことに繋がります。

展開中の貴社のビジネスは、もしかしたら今後好転する事があるかもしれません。しかし、ここ数年で現状維持がやっとという状況であれば、残された選択肢は3つしかありません。新規の販路を模索するか、現状維持のままコストダウンを図るか、思い切って事業を停止して新しいビジネスを展開していくかのみです。現状維持だと好転する外部要素がない限り、利益拡大は期待薄です。現状維持で赤字状態であるならば、思い切って止めてしまうの1手です。

ここ数年でタイへ進出する日経会社の中で、個人株主の会社が2017の11.0%から13.6%と大きく増加しています。ジェトロによれば、全体割合的にはまだまだ少ないですが、以前のような日本の大企業の資本力を持って、タイでの生産拠点としての進出より、中小企業数の増加が目立ちます。

一般的にも、中小企業や小規模の会社であればあるほど、意思決定を素早く行えます。そのため、継続か撤退かの素早い判断こそ、次に繋がる重要な決め手となります。

参考:ジェトロ 「タイ日系企業進出動向調査 2020年」調査結果

会社精算後に本帰国する場合

賃貸契約の解除

コンド等を借りているなら、解除します。部屋を借りた時の契約書に基づき、違約金が発生する場合もあります。会社名義で借りている場合は、会社の精算時に解約するはずなので、従業員の解雇日まで過ごす部屋を確保しないといけません。そのため、解約日を調整する必要がありますのでご注意ください。

銀行口座

タイの口座は銀行次第かもしれませんが、私が使用していたKbankは、口座の残高がある程度あれば、その後も持ち続けることができます。

もし今後、タイ旅行をする際に簡単に現地通貨を確保できるため、キープしておいてもいいかもしれません。

またコンドの精算などで使用することもあるので、急いで解約する必要はないかもしれません。しかし、日本の銀行口座と異なり、口座維持費がかかるのでそこだけはご注意ください。

オーバーステイにならないように!

とにかく最重要項目として、VISAもワークパーミットも返却しますので、期日までに一度出国しないといけません。再入国する際には観光ビジネス扱いになるので、滞在日に注意しないといけません。在タイ企業の他社へと転職して新たなVISAがない限り、残務処理が必要な場合には、VISAが切れる日には、必ず一度出国しておきましょう。

家族ビザ(O-VISA)があるならば、この限りではありませんが、私はO-VISAを所有していないので、詳しくは不明なので、ご自身でお調べください。